元のスレッド
スクールランブルIF10【脳内補完】
- 1 名前:空振り派 ◆SwiNgZaM :04/07/02 19:32 ID:gthoWUqs
- 週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」は
毎週9ページの週刊少年漫画です。
物足りない、もっとキャラのサイドストーリー・ショートストーリーが見たい人もいる事でしょう。
また、こんな隠されたストーリーがあっても良いのでは?
有り得そうな展開を考察して、こんな話思いついたんだけど…といった方もいるはずです。
このスレッドは、そんな“スクランSSを書きたい”と、思っている人のためのスレッドです。
【要はスクールランブルSSスレッドです】
SS書き限定の心構えとして「叩かれても泣かない」位の気概で。
的確な感想・アドバイスレスをしてくれた人の意見を取り入れ、更なる作品を目指しましょう。
≪執拗な荒らし行為厳禁です≫≪荒らしはスルーしてください。削除依頼を通しやすくするためです≫
≪他の漫画のキャラを出すSSは認められていません≫
SS保管庫
http://www13.ocn.ne.jp/~reason/
【過去スレ】
スクールランブルIF09【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1087097681/
スクールランブルIf08【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1084117367/
スクールランブルIf07【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1082299496/
スクールランブルIf06【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1078844925/
スクールランブルIf05【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1076661969/
スクールランブルIf04【脳内補完】(スレスト)
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1076127601/
- 2 名前:空振り派 ◆SwiNgZaM :04/07/02 19:33 ID:gthoWUqs
- 関連スレ(21歳未満立ち入り禁止)
【スクラン】スクランスレ@エロパロ板3【限定!】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1082689480/l50
【荒らし行為について】
“完全放置”でよろしくお願いします
■ 削除ガイドライン
http://www.2ch.net/guide/adv.html#saku_guide
- 3 名前:空振り派 ◆SwiNgZaM :04/07/02 19:34 ID:gthoWUqs
- ネタばれSSも当然不可です。
テンプレはここまでです。
- 4 名前:Classical名無しさん :04/07/02 19:45 ID:4IuKXFcg
- 乙
SSも乙だ
- 5 名前:Classical名無しさん :04/07/02 19:48 ID:6QhNHV3A
- 乙です。
沢近放浪編・・・・・気になる。
とりあえずSSも乙
- 6 名前:空振り派 ◆SwiNgZaM :04/07/02 19:49 ID:gthoWUqs
- 誰も来ない・・・orz。
スレ立てミスっていないことを祈りつつ・・・
SS職人の皆様の次回作に期待します。
- 7 名前:空振り派 ◆SwiNgZaM :04/07/02 19:52 ID:gthoWUqs
- あw
来てくれて良かった。
新参者ですが、今後ともよろしくお願いします。
- 8 名前:Classical名無しさん :04/07/02 19:54 ID:4IuKXFcg
- トリップつけないほうがいいと思うよ
特に新しい人は叩かれるし
- 9 名前:Classical名無しさん :04/07/02 19:55 ID:6gWpwnUI
- 空振りって、誰のカップリングですか?
- 10 名前:Classical名無しさん :04/07/02 19:55 ID:Tw7SD30c
- 乙です
- 11 名前:Classical名無しさん :04/07/02 19:58 ID:woHGmh4U
- >>1
乙です。
テンプレにここも入れたいな
ttp://www.asahi-net.or.jp/~mi9t-mttn/cstory/index.html
- 12 名前:Classical名無しさん :04/07/02 20:19 ID:Vc5HHn9I
- 別に入れなくていいよ、うっとうしい。
- 13 名前:Classical名無しさん :04/07/02 20:33 ID:Pp4HmIL.
- いや入れるにこしたことはないだろ
読んだことない人がいるのはもったいないよ。
- 14 名前:Classical名無しさん :04/07/02 20:39 ID:Vc5HHn9I
- >11みたいな感想も書かずにケチだけつける奴が増えるから必要ない。
文章作法の出来、不出来と内容の良し悪しは無関係だから。
- 15 名前:Classical名無しさん :04/07/02 20:53 ID:Pp4HmIL.
- 文章作法というか文章力は最重要ポイントだと思います。
- 16 名前:Classical名無しさん :04/07/02 21:02 ID:eZ8RRKjE
- 文章力なければ書いちゃいけないって訳でもあるまい。
- 17 名前:Connections with you :04/07/02 21:07 ID:qmlfIyEQ
- ……なんだかナナメに盛り上がっているので、流れを無視してみます。
晶をメインに、毎度ながらスクランっぽくねぇと思いつつ。
- 18 名前:Connections with you :04/07/02 21:08 ID:qmlfIyEQ
- 立ち振る舞いに足の運び、身のこなし。
目を瞑っていても、どこにいたとしても、そのすべてを思い出せる自信はある。
別にそれが嫌いだったわけじゃない――むしろ好きだったと、そう思う。
けれど同時に、それが世界のすべてだとも思えなかった。
だから、家を出た。
『行ってらっしゃい』
すべてを告げたとき、その人はそう言った。もっと世界を見てきなさい、と。
『行ってきます』
だから、そう答えた。
『先生』ではなく、『母』に。
――そして世界は広かった。
言葉にしてしまえばどうということもなく、けれどそんな現実。生きていく、というのはなかなか大変なことで、
そのために多くの時間を費やして、いくばくかの報酬を得る時間が続いた。
切り捨てたものに失ったもの、それを数え上げれば切りがないはずで、辛くなかったと言えば嘘になるだろう。
それでも楽しかったのは嘘ではないと思う。生活が軌道に乗り、ようやく手にしたささやかな余裕の中で、見えな
かったたくさんのことが見えるようになり、何よりもっと大事なものを得た。
何物にも代え難い、それは――
- 19 名前:Connections with you :04/07/02 21:08 ID:qmlfIyEQ
- 「――ら、晶、聞いてる?」
ふと、遠く聞こえる声に我に返る。
戻ってきた視界には、怪訝そうな様子の愛理、窓際には頬杖をついた刑部先生。そう、部室だ。
「ごめんなさい。少し呆けていたようね」
返事を返しつつ、どうして急にそんなことを思い出したのか、そう考える――と、その答は目の前にあった。
茶碗。
名目上とは言え茶道部は茶道部、茶を点てるための道具は一通り揃っている。たまには、と気紛れにそれを準備して
いたところに、こちらも気紛れに、珍しく愛理がここを訪れた、そういうことだったとようやく思い出す。まったく、
我ながら情けないと胸中で反省。
「呆けてたって、珍しいわね……」
それを知ってか知らずか、さらに眉をひそめる愛理に、あなたのそういう顔の方が珍しいのだけれど、と思うけれど、
あえて口にしない。そうこうしているうちにも、何か言葉を探しているようだった彼女が口を開く。
「ほら、何て言ったかしら……」
それが精一杯だったのかどうなのか、次に出てきた言葉は――
「そう、『鬼の拡散』?」
――鬼が広がっていくらしい。
「……『鬼の霍乱』、よ」
一瞬の静寂。
「く、くくく……」
やがてそれを打ち破ったのは、堪えきれない、といったように吹き出した刑部先生。あはは、なんて普段見せない
ような表情で笑っている。
- 20 名前:Connections with you :04/07/02 21:09 ID:qmlfIyEQ
- 「ちょ、ちょっと間違えただけじゃないですか! ああもう、晶も何か言ってよ!」
真っ赤な顔をして怒鳴り立てる愛理。
その顔を見て――
「……晶? なに、ちょっ、や、やめ……」
黙って両手を伸ばし、その頬を引っ張ってみる。
むにー。
そんな擬音がどこからか聞こえた気がする。
「ななな、何するのよっ!」
「――なんとなく」
「は――?」
虚をつかれた、というように、一度は私の手を振り払ったそのガードがゆるむ。
むにー。
もう一度。
「あ、あひらっ!」
部屋に響くのは、そんな怒声と刑部先生の笑い声。
- 21 名前:Connections with you :04/07/02 21:09 ID:qmlfIyEQ
- ――そんな騒ぎも、愛理が飛び出していって収まって。
「わざとにしろ本気にしろ、なかなか難しいところだったね」
「……どちらでも構いませんよ。私のために言ってくれたみたいですから」
それにしたって、励ますには彼女らしくあまりに不器用すぎたと思うけれど。
「うん、それはそうだな。……いやしかし、ああいうところもあるんだね、彼女。意外に心配性だ」
「ええ、普段は絶対見せませんけど」
ふうん、と言ってにやにやと笑う刑部先生。その笑顔の意味は、即ち。
――分かっているなら言ってあげればいいのにね。
「駄目ですよ。そういうの好きじゃないですから、彼女」
「だからこそ、だよ」
表情はそのままに、こちらを試すようなその言葉。誘いに乗るのは負けだとしても、乗らなければ終わらない。
つくづく、この人は教師に向いていると思う。生徒と対話する、という点において。
「先生、使いどころをわきまえるからこそ――」
「――切り札、かな」
「そういうことにしておいてください」
小さく肩をすくめてみせると、ふっ、と今度は一転して優しい笑み。
- 22 名前:Connections with you :04/07/02 21:10 ID:qmlfIyEQ
- 「ま、ともかくだ。そういう『縁』はしっかりと握っていた方がいい。いつかきっと君の……そうだな、宝になる」
「宝……ですか」
「そうさ、何物にも代え難い、ね」
「……それは例えば先生にとって、笹倉先生のことですか? それとも――」
使いどころをわきまえるからこそ、切り札。今がそうかはともかくとして、この程度なら許されるだろう、と彼女
へのそれをちらつかせてみる。そこにあるのは『彼』の名前。
「ストップ、その先は言わなくていいよ。……これで引き分け、かな」
苦笑に対する返事は、さあどうでしょう、の一言。
「それでは、ちょっと失礼します」
そんな化かし合いも一段落、席を立って部屋の出口に向かい、そしてその扉の前で足を止め、後ろを向いたままで。
「――先生、私と愛理の『縁』はそんなに簡単に切れるものじゃありませんよ」
そう、たとえ何があろうと。
「友達、ですから」
ぱちぱち、と背後から聞こえた拍手にも、あえて振り向かずにそのまま廊下に出る。
「……さて、追いつけるかしら」
愛理のことだから、家まで走って帰るような真似は絶対にしない。何でもないような顔をして、いつものように
歩いているはず。
――なら、大丈夫。
自然洩れる小さな笑み。一つ大きな深呼吸をして、久しぶりに――本当に久しぶりに、私は駆け出した。
伏せたその切り札を開くために。
- 23 名前:Connections with you :04/07/02 21:11 ID:qmlfIyEQ
- 案の定、学校を出ていくらもしないうちに、ゆっくりと歩くその後ろ姿。
「……何よ」
声をかける前に気づかれた……と言うよりむしろ。
「待たせたかしら?」
「っ、そんなわけないでしょう?」
そっぽを向く顔は、やはり赤い。その分かりやすさだけは昔から変わらないと思う。
でも。
「変わったわね、愛理」
良くも悪くも八方美人のお嬢様――それはもう、どこにもいない。自分の言葉で語り、自分の表情を見せる、
そんな沢近愛理がそこにいる。
「美琴と仲良くなってからかしら」
「……関係ないわよ、別に」
意地っ張りで強がりなところは、等身大にはまだまだ遠いけれど。とはいえ、それを口にするのは藪蛇以外の
何物でもなく、さしあたっては心の中に留めておく。それもまた、私の持ち札。
「そう、ならそういうことにしておくわ」
「……だから何よ、その言い方は」
「別に。それと、こちらが本題なんだけど」
伏せておいたカード。それは何もジョーカーである必要なんてない。使いどころさえ誤らなければ、どんな
カードも切り札になる。
そして、今使うべきそれは、ただ一言。
「ありがとう、愛理」
「……」
反射的に何かを言おうとして、言えなくて、結局、ふん、なんて横を向く。うん、やっぱり分かりやすい。
- 24 名前:Connections with you :04/07/02 21:11 ID:qmlfIyEQ
- 「はあ……どうして私、あなたと付き合ってるのかしらね」
「理由なんて必要かしら?」
諦めたせいなのかどうなのか、不思議と優しく聞こえるその声に、内心苦笑しつつも言葉を返す。
「……それもそうだけど」
「こういうのを『腐れ縁』って言うの」
「『腐れ縁』? 腐ってるとすぐ切れちゃうんじゃないの?」
「語源はそうじゃないの……要は切っても切れない関係、ということよ」
きょとんとした顔の愛理。
「あなたと、私が?」
「そう。あなたと、私が。悪い話じゃないと思うけど」
またしても言葉に詰まる愛理。
けれど。
「変わったわね、晶も」
今度は、小さく微笑みつつ切り返してきた。
「私が?」
「そうよ。だってほら、昔はもっと……」
そこで言葉に詰まる。確かに、愛理と出会ったあの頃の私には、周囲に目を向けるほどの余裕はなかった。
もっとも、今思えばそんな私のそばにいた彼女は、やはり重度のお人好しになるのだろう。
まあ、それはともかくとして。結局の所、優しいから嘘はつけない、つまりは不器用なのだ。本人は絶対に
否定するだろうけれど。
- 25 名前:Connections with you :04/07/02 21:12 ID:qmlfIyEQ
- 「そうね――」
そんな彼女を見ながら思う。
理由はあるかもしれない、ないかもしれない。
ただ、なんとなく。
そうやって私たちは変わっていく。
変わり続けていく。
ただ、私の場合は一つ確かなことがある。
だから言っておく。
「――愛理のおかげかしら」
たまには、駆け引き抜きで。
「……だから、なんでそうなるのよ」
「さあ、どうしてかしらね」
仏頂面で、でもやっぱり赤面している友人にそう言ってから、それじゃ、と踵を返す。
「あら、まだ帰らないの?」
「一緒に帰りたかった?」
「……晶」
「冗談。部室の片付けがあるの」
そう、と答える顔は心なしか残念そうではあるけれど、それ以上はもう言わない。何事もほどほどに。
「じゃあ、そういうことで」
「ええ、また明日」
そうやって踏み出した、彼女のその足取りが軽いことを確認してから、私も歩き出す。
学校へ、そして今日とは違う明日へ向けて。
- 26 名前:Connections with you :04/07/02 21:15 ID:qmlfIyEQ
- 晶は斜に構えてるだけじゃない……と思いたいのはやはり願望なのか。
沢近とのコンビはあれで結構仲良くやってると思うんですが、はてさて。
- 27 名前:空振り派 :04/07/02 21:37 ID:gthoWUqs
- >>8
そうですね。まだ認知度も無いのでトリップなしでいきます。
>>9
基本的にどのカップリングも好きですが、トホホが好きなのでそう付けました。
播磨萌えw
>>11
初心者でスミマセン・・・orz
参考にさせていただきます。
個人的には小説としてよりも、スクランとして面白ければいいかと思ってるんですが、
面白くないって言われたら・・・退場します。
- 28 名前:空振り派 :04/07/02 21:49 ID:gthoWUqs
- 間にはさまらなくて良かった・・・。
>>26
晶でSS書けるっていうのはすごいですね。
しかも自然な感じです。
- 29 名前:Classical名無しさん :04/07/02 21:53 ID:cqElxPqQ
- ナイス晶。
本編でももうちっと動くと良いな。
- 30 名前:Classical名無しさん :04/07/02 23:42 ID:qQs0aFQ2
- >>26
お疲れさまでした。
女性キャラ同士の一こまという感じですね。
あまりSSにのぼらない晶をネタにした面白いSSだと思いました。
文章自体も安定していたと思います。
個人的には、もう少し一文辺りの長さが、長い方が読みやすいかなと思いましたが……
次回作期待しています
- 31 名前:Classical名無しさん :04/07/03 00:18 ID:vo3BkxAI
- 貴重な晶分補給させていただきました。
グッジョブ!
>>空振り派さん
スクランとして面白ければいいってのは分かるんですが、
文章にする上でのいくつかの約束事を実践したほうが同じネタでも面白さ違いますよ。
ぜひたくさん書いて練習してください
- 32 名前:Classical名無しさん :04/07/03 09:17 ID:16aSrknY
- 前スレのあれとあれに影響を受けすぎたかもしれません。
《投下》
- 33 名前:エンジェル・ハイロゥ 1/6 :04/07/03 09:17 ID:16aSrknY
- 校舎内でさえ吐く息が白くなるようなとびきり寒い放課後に、鼻歌を歌う女生徒。
犬は喜び庭駆け回り 猫はこたつで丸くなる♪ という歌詞が事実に即しているのなら、
彼女は間違いなくイヌ科に属するタイプの人間なのだろう。
人懐っこく、信義に厚い。ついでに黒のニーソックスがよく似合う。
彼女の名は、サラ・アディエマスという。
「窓ガラスに息を吹きかけて指で落書き――― とか、昔やりませんでした?」
茶道部の部室でまさに“それ”をしながら、サラは部長の晶に訊ねる。
「昔ならともかく、今は人のいる場所でやろうとは絶対に思わないね。羨ましいよ」
「羨ましいなんて言わずに一緒に楽しみましょうよ。窓はまだ沢山ありますし」
晶の発言を額面通りに受け取って無邪気な返答を返すサラ。
だが、ストーブでみかんを熱して遊んでいる晶はもう落書きなどには関心のない様子。
仕方なくサラは自分の作業、すなわち指先で描く刹那の芸術に意識を集中してゆく。
「でーきたっと」
窓ガラス一面に描かれたのは、黒猫を膝に抱く優しげな美女の画。
黒を表現するために塗りつぶした部分から雫が落ちようとしているのが惜しいが、
見る人が見ればそれが彼女の親友・塚本八雲であることはすぐにわかる見事な出来栄えだ。
「へえ、上手いね。あとは八雲がこの絵が奇麗なうちに来てくれれば完璧だね」
「そうですね。でも、八雲には見られたくないなって思う気持ちもありますよ?」
照れたような笑顔を振り撒き、もう一度自分の描いた八雲の絵をしっかりと見つめる。
―――八雲にはこんなふうに、いつも幸せでいてほしいよね。うん!
気付けば、視界が滲んでいた。驚きながらこっそりとハンカチを取り出したサラ。
「……何が悲しいのか事情は知らないけれど、話なら聞いてあげられると思う」
見られてしまっていたらしい。だとすれば、この茶道部部長に隠し事は通用しない。
逡巡しながらも、サラは晶に甘えてみることにした。
- 34 名前:エンジェル・ハイロゥ 2/6 :04/07/03 09:18 ID:16aSrknY
- テーブルに向かい合う二人。
「困ったなぁ。私、これでもシスターなんだから悩める人たちを救う立場なのに。
何だか日本に来てから、みんなに助けられてばっかりです。いいんでしょうかね?」
いつもと変わらぬ人懐っこいサラの笑顔。
しかし、晶の視線はその笑みの普段と異なるぎこちなさを見抜いているようで。
溜めていたものを全部吐き出すかのような長い深呼吸をしたのち、サラは言う。
「話すと私はスッキリするかもしれませんけど、きっと部長には重荷になっちゃいます。
だから…… やっぱりやめませんか? 私部長のこと大好きですし」
「はぐらかさないで。そんなこともわからないで聞くほど浮かれてるわけじゃないから」
普段通りのようでありながらも、研ぎ澄まされた刃のように冷たく鋭いその声。
だがサラはその声を怖いとは思わず、むしろ頼もしいと思った。
迷いを振り切って、サラは口を開いた。
「秋になってから、八雲が変わった ……っていうのはわかりますよね?」
「もちろん。その原因はこれでしょ?」
そう言って鞄から取り出した数枚のL判写真を片手で上手に扇状に広げる晶。
写っているのは、常にサングラスを外さない晶のクラスメート、播磨拳児。
教室内から海・キャンプ・体育祭まで、いつ撮ったのかと聞きたくなるような枚数だ。
「そこまでわかって下さっているのなら話は早いです。にしてもよく撮れてますね。
播磨先輩って、八雲のお姉さんの隣りの席だったんだ……。あれ、この写真は?」
屋外で動物たちに囲まれながら手を取り合う播磨と金髪の女生徒の写真。
まるでドラマのワンシーンのようだとサラが感心していると、すぐに晶に抜き取られた。
「これは最終兵器。愛理が遊びに来ても絶対にばらしちゃだめだよ。面白くないから」
言葉の意味はよくわからないが、このまま話を脱線させてしまってはいけない。
サラは本題に戻そうと、晶からさっきから弄んでいるみかんを奪い取ってから続ける。
- 35 名前:エンジェル・ハイロゥ 3/6 :04/07/03 09:19 ID:16aSrknY
- 「八雲は、恋をしています。それもきっと初めての」
「いいんじゃないの? 彼女が彼にどんな感情を持っていても。それとも嫉妬?」
「恋をすることが問題なんじゃありません。相手が播磨先輩なのが問題なんです。
ずっと八雲と一緒に見てきましたけど、播磨先輩は八雲のこと、なんとも思ってません」
誰に対して憤ればいいのかわからなかった問題だからか、晶を前に口調を荒らげるサラ。
「初恋がうまくいく可能性なんて、ものすごく低いってことは知ってるよね?」
「そういうことじゃなくて…… なんて言ったらいいんでしょうね。
今の八雲は自分の感情に戸惑っていて、不器用なまでにいじらしくて。見てられません」
次第に涙声になってきたサラを心配したのか、晶は沈黙を埋めるように語りだす。
「私のクラスにもすごく恋愛に不器用な子がいてね。彼女も必死だよ。
もう振り向いてもらえない事に気付いているのかもしれないけど、常に気丈であり続けて。
たとえそれが悲痛に見えたとしても、彼女は他人の忠告なんて決して受け入れないと思う」
かすかな苦笑で締める。
サラには見当のつかないはずの事として言ったのか、気付く事として言ってみたのか。
晶の意図ははっきりとはしないが、結果としてはサラは該当する人物に思い至らなかった。
話の内容だけを正しく理解し、少し考えたのちに返答する。
「それでも私は、たとえそれがエゴだとしてもこれ以上痛々しい八雲は見たくないから。
結婚式の宣伝という名目で八雲にウェディングドレスを着てもらったのも、
本当は麻生先輩みたいないい人なら八雲ときっと仲良くなれると思ったからなんですよ?」
その一言に、今までほとんど表情の変化のなかった晶がわずかに顔をしかめた。
「麻生君を八雲と? サラ、それは……」
「あはは、気付いちゃってましたか? おかしいなぁ。ばれてないと思ってたんですけど」
屈託なく笑うサラ。
その笑顔は、本当にいつもの笑顔と同じで。
晶は、初めてこのイギリスから来た後輩を、怖いと思った。
- 36 名前:エンジェル・ハイロゥ 4/7 :04/07/03 09:25 ID:16aSrknY
- サラの手からみかんを取り戻し、テーブル上でぐりぐり回しながら晶は言う。
「間違いなくエゴだよそれは。播磨君が彼女を利用しようとしているわけでもないし。
いつか悲しい思いをするとわかっていても、それでもそれが彼女の選んだ道なんだから」
「……先輩は、大人なんですね」
「貴女よりひとつだけね。まだまだ刑部先生には追いつけないよ」
軽くかわす。
「でも私はそんな答えじゃ納得しません。だって私、交換留学生ですから。
卒業までずっとこの高校にいたいと思ってはいますけど、多分来年度には祖国にいます。
八雲が一番辛いときに、そばにいてあげられないかもしれないだなんて絶対にイヤです」
いつか来る別れをすでに覚悟しているサラの、今まで誰にも言えなかった決意表明。
決して譲ることのできない強い想いが、言葉となって晶を威圧する。
麻生のことといい、どうして彼女はそこまで八雲に心酔しているのか。
友情というには極端すぎるそのサラの態度に不信感を抱きながら、晶は聞いてみる。
「八雲のことがそれほどまでに大切? どうして自分より先に彼女の幸せを願うの?
あなたが旧教のシスターな事は理解しているつもりだけど、どうしてもわからない」
するとサラは驚いた様子で、
「そんなこともわからないんですか? 八雲のことが『大好き』だからですよっ♪」
本心から出た言葉なのであろう。そう発言する彼女は、実に幸せそうで。
- 37 名前:エンジェル・ハイロゥ 5/7 :04/07/03 09:26 ID:16aSrknY
- 「……まいったね。確かに貴女の想いは私には重荷になったかもしれない。
八雲は播磨君のものでもなければ、サラのものでもない。常に八雲自身なんだよ?
彼女を信じ、それを支える天満や私たちも信じてくれていると思ってたのに」
晶は悲しげにそう言い放ったあと、まっすぐにサラの真珠色の瞳を見つめた。
見つめられたサラは数秒間何も言えずにいたが、不意に真顔と笑顔をくり返して。
「……ずるいなぁ。部長はともかく、―――その、塚本先輩っていうのは。
八雲が何があろうと大好きだと行動で語ってるお姉さんの名前を引き合いに出されたら、
どうやっても勝ち目がないじゃないですか。八雲の一番になりたいのは私も同じなのに。
……私の我儘は、忘れちゃって下さい。もちろん八雲にはナイショにしてくれますよね?」
イタズラが見つかった子供のように、ちらっと舌を出しながら媚びを売るサラ。
どうやら、サラの抱えていた悩みは心の中で一応の決着を見い出せたらしい。
- 38 名前:エンジェル・ハイロゥ 6/7 :04/07/03 09:27 ID:16aSrknY
- サラは立ち上がる。それが終了宣言。
軽く伸びをして肩をほぐし、もう一度窓に向かって歩き出す。
そして窓の前で何かに気付いたように立ち止まり、振り返って告げる。
「うん。なんでこんな話をすることになったのか、なんとなくわかりました。
見てください、窓の外を。かすかにですけど、雪が舞ってます」
言われるがままにテーブルに座った格好のまま外を眺める晶。
白く舞う粉雪。それは地に触れるとそのまま形を失って融けてゆくような、儚い雪。
普段以上にジト目になって外を凝視していた晶の傍へ寄って、サラはこう続ける。
「ほら。冬になると、わけもなく悲しくなったりしません?」
晶を気遣うようなその笑顔。悩みに一応の解決を得たからなのか、前より輝いている。
その眩しさは、晶が昔恨みを込めて否定したはずの神や天使といった存在を彷彿とさせて。
「……そうだね」
意識してのネタだとすればそれに応えてツッコミをいれなければいけないと思ったのに、
何故かそう答えるのが精一杯な程疲れていたらしくて、晶はそのまま顔を伏せた。
積もることなどありえない雪がはらはらと消えていく中、晶は言う。
「八雲は…… まだ屋上かな。雪まで降ってるのによくやるよ。二人とも」
「屋上? こんなに寒いのに、播磨先輩とそんな所にいるんですか?」
携帯メールが届くたびに播磨と密会していることはもうサラも知るところではある。
何をしているのかまでは訊き出せなかったが、播磨の名前を出した時の反応で一発だ。
「播磨君も、一途なのはいいけどなんでああまで鈍感なんだか……」
呆れ果てたような口調でそのまま居眠りをする体勢に入った晶。
だが、何かを思いついたのか急に顔を上げ、サラに提案する。
- 39 名前:エンジェル・ハイロゥ 7/7 :04/07/03 09:31 ID:16aSrknY
- 「私は信徒ではないけれど、一緒に神様にお願いしてみようか」
「珍しいですね。私も後輩としてシスターとして、一緒にお祈りしたいです。
部長は宗教みたいなはっきりしないものは一切信じないタイプだと思ってたんですけど。
で、どんなお願いをしましょうか。やっぱり播磨先輩が心変わりすることですか?」
楽しそうにサラは問う。
「それも面白そうだけど、こっちにも都合があってね。親友は裏切りたくないし。
『悲しみを乗り越えるたびに、彼女がよりいい女になっていきますように』でどう?」
無言の肯定。満足げにサラはその文言を英訳して口ずさむ。
「でもそんな願いが叶ったら大変ですね。今でも八雲はあんなに魅力的なのに」
「確かに、今まで以上に大変な事になる馬鹿がいるね。すでに花井はあんななのに」
「あっ、呼び捨てですかぁ? 積極的ですね」
「……サラ?」
上機嫌のサラと、最後の一言でカチンときた晶。
でもその嬉しそうなサラを見ているうちに、晶も何もかも許せる気持ちに―――
ガッ。
「痛ーい。本気でゲンコツする事ないじゃないですかー。ぷんぷん」
なっていなかったらしい。自らの拳に息を吹きかけながら、痛がるサラに晶は尋ねる。
「そうと決まればあれだね。八雲にどんな悲しいことがあっても心が負けたりしないよう、
今からいっぱい楽しい思い出をみんなで作らないと。サラは冬はどこに行きたい?」
「冬休みにも旅行があるんですか? だったら私、日本の凍った湖を見てみたいです。
夏にご一緒できませんでしたから、寒いところで八雲といっぱいいちゃいちゃします」
苦笑する晶。でもまあ、その願いを叶えることくらいはできるだろう。
「よろしい。かわいい後輩のお願い、神に代わって叶えてしんぜよう」
時代がかった物言いをする晶の背後の廊下からは、すでに遠い靴音が聞こえてきていた。
―――もうすぐ、茶道部にいつもの面々が揃う。
《おわり》
- 40 名前:32 :04/07/03 09:32 ID:16aSrknY
- また密度オーバーで一部分割せざるを得ませんでした。学習能力低すぎだぞ私。
八雲が恋をしているらしいので、時間軸は冬になってます。
タイトルは英語で「後光」……というかVガンダム。おかしいですよ黒サラさん!
- 41 名前:Classical名無しさん :04/07/03 11:44 ID:H6nAMYN6
- GJ!
- 42 名前:Classical名無しさん :04/07/03 11:55 ID:KfToacVA
- >>40
後光といえば、Haloだな。
Good Job Son!!
- 43 名前:Classical名無しさん :04/07/03 14:26 ID:CIAd2fJ6
- GJ!
お疲れ様です。
- 44 名前:Classical名無しさん :04/07/03 14:42 ID:Fxxuq7bM
- >>26
うわ、晶ネタ先を越された OTL
それはともかく、沢近と晶の昆布が上手く書かれていて楽しめました。GJ!!
>>40
うあーうあーうあー。こういうのがあるからSSを読むのを止められないw
黒サラと白サラの塩梅が絶妙でした。もちろん、話の内容も。
こんな作品を書いてみたいと思わせる一品でした。
- 45 名前:Classical名無しさん :04/07/03 16:00 ID:0h9QWHao
- サラはニーソックスはいてない・・・・・・
- 46 名前:32 :04/07/03 22:38 ID:cWK007Rg
- うわ、ほんとだ…… どのコマでも例外なくストッキングですね。ぎゃふん。
嘘バレなんて作ってずに投下前にちゃんと読み直すべきでした。指摘サンクス。
- 47 名前:クズリ :04/07/04 02:07 ID:nUoXiSLg
- こんばんは、クズリです。前スレからの連載、引っ張らせていただきます。が、その前に。
改めて前スレにて御声援下さった皆様、どうもありがとうございます。こちらのスレでも
まだまだ頑張らせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。
拙い作品ですが、皆様に捧げさせていただきます。
私信>>608
私の他の作品のSSですが……恥ずかしいので秘密じゃだめですかね?クズリ名義では
ないとだけ……
ということで、前スレからの続きですが。
『Without Me』 >>191->>197 同改訂版→SS保管庫@分校
『Crossing Border』 >>318->>330 同改訂版→SS保管庫@分校
『She wants to mobe』 >>345->>355
『Don't go away』 >>391->>399
『Where I End and You Begin』 >>498->>507 同改訂版→SS避難所スレ@分校
『Rollin'』 >>539->>549
『You Just Don't Know Me At All』 >>589->>595
に続いて。
『End of Everything』
- 48 名前:End of Everything :04/07/04 02:10 ID:nUoXiSLg
- 部屋の電気をつけることもせず、八雲はのろのろとベッドに向かった。
閉めたカーテンの向こう側で降り続ける雨の音が、とても遠くの世界のものに聞こえた。
School Rumble
♭−θ End of Everything
そのままベッドに倒れこんだ八雲の耳に、不意に飛び込んでくる着信メロディ。
動くのが億劫で、しばらくの間、携帯電話を取ることもせず放置する。が、音楽は休むことなく
流れ続けた。
ようやくに鞄に手を伸ばし、取り出して見る。画面に浮かび上がる名前は『サラ』。
少し迷った後、八雲は通話ボタンを押す。
「もしもし……?」
「あ、もしもし、八雲?サラだけど」
親友の声は明るい。後ろに小さくショパンの『雨だれワルツ』が聞こえる。おそらく部屋にいる
のだろう。
「サラ……」
「ごめんね。どうなったか気になっちゃって……もしかして、お邪魔だったりする?」
からかう様なサラの口調に、しかし、八雲は何も答えられなかった。ベッドの上に膝を抱えて座
り、顔を埋める。
「……八雲?どうかしたの?」
電話の向こうにいても異変を感じたのだろう。声の居住まいをただしてサラが問いかけてきた。
八雲は答えようとするが、
「…………」
何も言うことが出来なかった。微かに開いた唇からは、言葉にならない小さな呻きがただ漏れる
だけ。
八雲は左手でぎゅっとシーツを握り締める。しわ一つなかった白の平面に、歪みが生まれた。強
く握るたびに、歪みは深く大きくなる。
「…………」
サラの小さな吐息が聞こえてきた。音楽が消え、代わりに、おそらく彼女がソファーに身を沈め
たのだろう音がする。
そしてサラは、その美しい声で言った。
「ずっとここにいるからね、八雲」
- 49 名前:End of Everything :04/07/04 02:11 ID:nUoXiSLg
- 八雲は胎児のように身を縮めて、ただ携帯を握り締め続ける。膝の上に顎を乗せたり、顔を太も
もに押し付けたりと、小さく身じろぎはするものの、口を開くことはない。唇はわずかに色を失い、
瞳は薄暗い部屋の宙をぼんやりと見つめていた。
涙はなかった。ただその長い睫毛が微かに揺れるだけで、八雲は泣かなかった。
約束どおり、サラはずっと『そこ』に居続けた。彼女もまた言葉を発するわけではなく、その息
の音も聞こえない。
それでも、気配でわかった。彼女はいる。そして耳を傾けてくれている。
八雲の沈黙の奥にある心を受け止めてくれている。
微かに震える声で、八雲は言った。
「サラ」
「ん?なーに、八雲」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
そしてまた八雲は口を閉ざし、サラは耳になる。
だがそれはただの沈黙ではなく、とても雄弁な静寂だった。
時計の長針が半周ほどしただろうか。その間に交わされた会話は、先の一つのみ。
それでも八雲は少しずつ、心の平穏を取り戻していった。離れていても、サラの存在がとても近
くに感じられた。まるで寄り添ってくれているかのように、彼女のぬくもりが、凍えていた八雲の
心をゆっくりと溶かしていく。
それは春の曙光が名残雪を溶かしていく、そんな暖かさだった。
「……サラ」
「何?八雲」
ずっと黙っていたからか、声が少しかすれている。だが唐突に話しかけても、サラはすぐに言葉
を返してきた。
「……ありがとう」
「どういたしまして……落ち着いた?」
言葉は同じ、だが先ほどと違う気配を感じ取ったのだろうか。サラはそう問いかけてくる。
八雲はうん、と小さく声に出し、見えないと知りつつも頷いた。
それでも彼女にはきっと、届くと思ったから。
- 50 名前:End of Everything :04/07/04 02:13 ID:nUoXiSLg
- その日、何があったのかを八雲は、ポツポツと喋り始めた。
いつかのように言葉を選ぶのではなく、ただ思いつくままに八雲は喋り続ける。途切れ途切れ、
かつ出来事の順番も正確ではない。そしていつもの彼女らしく、言葉が足りないこともままあった。
そんな支離滅裂な八雲の話を、しかしサラは辛抱強く聞いた。それはおそらく、彼女が教会で子
供達の相手をしていることと無関係ではないだろう。
動物園での出来事を全て話し終えて、八雲は一息つく。喉が少し渇いてきたのを感じていたが、
しかし部屋の外には出たくなかった。
いや、正確に言うならば、姉と顔を合わせたくなかったのだ。
「……それで?」
少しの沈黙の後、サラが促してくる。
ここまで八雲が話したことは、一見、楽しかった思い出ばかりだ。だがそれを語る八雲は精彩な
く淡々と……いや、むしろどこか苦しそうに話していた。
だから、まだ何かがある、とサラは思ったのだろう。促されて、八雲はゆっくりとその後のこと
を話し始めた。
動物園を出た後、通りがかった公園で彼が休んでいこうと言ったこと。そして、ベンチに座って
いるうちにいつの間にか、眠ってしまったこと。目を覚ました時、彼にもたれかかっていたこと。
起きたのに、もう少しだけ甘えていたくて、寝たふりをしてしまったこと。
そこに姉と沢近の二人が現れて、その場面を見られてしまったこと。
ゆっくりと、そして今度は整然と順序良く語る八雲の声音に表情はなかった。何かが麻痺してし
まったかのように、ありのままを描写していく。
サラはそんな友の声を、口を挟むことなく聞き続けている。
ただ一度だけ、八雲がふと、
「……ずるいことをしたから……バチが当たったのかな……」
そんなことを口にした時だけ、強い口調で返してきた。
「神様はそんなことで怒ったりしないわ。八雲は悪くない」
その後すぐに少しおどけて、
「ただ、ちょっと意地悪すぎよね。今度、文句を言っておくから」
最後は冗談めかして言った親友の言葉に、八雲は小さく笑う。その声が届いたのだろうか、そっ
とサラも笑った。
- 51 名前:End of Everything :04/07/04 02:14 ID:nUoXiSLg
- そこでふと、八雲は思い出す。
いつかもサラに言われたことがあった。笑えるなら大丈夫、と。
だとすれば今の自分は大丈夫なのだろうか。八雲は自らの心の中を探ってみる。
虚ろはなかった。大きな、そして埋められない喪失感が巣食っていた胸は今、凪いでいる。
「それで?」
再び、サラが促してくる。見られたところまでは話した。だがそれだけではないことを、ちゃん
と彼女は見抜いてきていた。
いや、サラはわかっていて聞いてきたのかもしれなかった。沢近と播磨の噂は、彼女とて知って
いる。だから、それは確認のようなものだったのかもしれない。二人の関係を見せられてしまった、
というようなことを想像しているのではないか。
八雲はわずかに目を細めた。もしも自分がサラと同じような立場に立っていたら、きっと自分も
同じように考えていただろう。
だが現実は違った。
扉の外の気配をうかがう。どうやら姉はいないようだ。自室に篭っているのだろうか。安堵しな
がらも、しかし声を潜めて八雲は言った。
「播磨さん……姉さんのことが……好きなんだって」
「…………!そう……」
息を飲む音、そして短い言葉はわずかに震えていた。サラの動揺が、電話越しにも伝わってきた。
八雲は小さく苦笑する。彼女の反応は、あまりにも想像通りだった。当たり前だろう、と八雲は
思う。そんな展開など考えたこともなかった。
「そう言われたの?播磨さんに」
サラの言葉に、八雲は頭を横に振りながら、
「ううん……でも、わかるの……」
そして説明し始める。
彼がその時、見ていたのは、自分でも沢近でもなく、天満だけだった。彼が叫んだ名前もまた、
姉だけだった。
話しながら八雲は、自分が変になってきている、そう感じていた。つい先ほど、姉と言葉を交わ
した時は、あんなに激しく荒れていたのに、今はまるで何も感じない。
- 52 名前:Classical名無しさん :04/07/04 02:14 ID:bJk6vnlE
- 支援ノ
- 53 名前:End of Everything :04/07/04 02:13 ID:nUoXiSLg
- 思い出すシーン、情景で傷つき胸を痛めていたのが嘘のように、穏やかに記憶と対していられる。
その不思議に、惑う気持ちを八雲は抑える。もうこれ以上、痛みを感じるのは嫌だったから。今
のまま、常のように心の平穏を保っていられるなら、それに越したことはない。
気を取り直し、話を続ける。
隠し事は嫌だったので、八雲は、追いかけようとする彼にしがみついて行かないで欲しいと頼ん
だこともちゃんとサラに話した。
ふうん。それが彼女の反応だった。もしも状況が違えば、サラはきっと心いくまで、八雲をから
かったことだろう。だが今は他に何を言うでもなく、ただ、
「それで、播磨さんは何て?」
「……何も……」
自然と声は沈む。彼にとっての自分の価値を改めて確認させられたような、そんな気分だった。
「ショック……受けてたみたいだったから」
もしかしたら、抱きつかれていたことにも気付いていなかったかもしれない。そうであってもお
かしくないほどに彼は落ち込んでいた。
「それで?どう言ったの?八雲」
秒針一周半分の沈黙のあと、サラが優しく問いかけてくる。
「播磨さんが行っても姉さんは聞かないだろうから……私が誤解を解くって……」
その約束は果たせたように、八雲は思う。だがそのために、己の心の一端を姉にさらけ出してし
まった。
振り返ってみれば、他にどうとだって出来たはずだった。例えば、いつものように姉の言葉を素
直に聞き入れるとか。
だが全ては後の祭りだった。彼女は、自分の妹が彼を好きだという事に気付いてしまっただろう。
「そっか……そうなんだ」
姉とのやりとりも包み隠さず話した八雲に、サラはそれだけを言って、口をつぐむ。
「私……馬鹿だね……」
膝を抱えたまま、ベッドに横になる。見慣れたはずの部屋の景色が、今は遠くに見えた。
「そんなことない」
自らを嘲る八雲の言葉を、サラは強く否定する。だがその言葉は、彼女に何の感銘も起こさせな
かった。
何と言われようと、自分は……馬鹿だ、と。
「そんなことないよ、八雲」
彼女の心を見抜いたのか、サラは言葉を重ねる。八雲は何も言葉を返さず、沈黙を守り続けた。
- 54 名前:End of Everything :04/07/04 02:14 ID:nUoXiSLg
- 「それだけ八雲が、播磨さんのことを好きってことじゃない。だったら、仕方ないよ」
サラの言葉にたくさんの思いやりと優しさが混じっていることに八雲は気付く。それは、嬉しか
った。だがその想いに応えることが出来ない……彼女はそう感じていた。
「……好きじゃない」
「……え?」
八雲の言葉に、サラは戸惑いの声を上げた。彼女は繰り返す。
「好きじゃない……好きだった……けどもう、終わり」
「………………」
携帯の向こうでサラが言葉を失っているのを、八雲はどこか他人事のように感じていた。
諦める。
それが八雲の出した結論だった。
恋を知らなかった少女は、それ故に、痛みに耐えることが出来なかった。
想いを永久に凍らせ、心の海へ沈める。そうすればこれ以上、傷つかなくてすむから。そして傷
つけなくてすむから。
「それでいいの?」
重々しく問いかけてくるサラに、八雲は小さく、だがはっきりと答えた。
「いい……これで、いいの……」
「……そう」
一瞬の空白は、サラの逡巡を表していたのだろう。だが何も口にすることなく、彼女は友の選択
を受け入れた。
「わかった。八雲がそう言うなら」
「……ありがとう」
「ん……」
どういたしまして、とサラは言わなかった。短い答えの中に、八雲は彼女の迷いを見る。だがそ
れを口にすることはせず、ただ黙って次の言葉を待った。
「ねえ……」
サラはゆっくりと、だがはっきりとした言葉で、再び八雲に問いかけてきた。
「八雲がそれでいいなら、私は何も言わない。でも……本当に、それでいいの?」
「いい……もう、終わったことだから」
含みのある友の言葉に、八雲もはっきりと答えた。胸の内に感じるわずかな痛みを隠しながら。
- 55 名前:End of Everything :04/07/04 02:15 ID:nUoXiSLg
- サラとの電話を終えた八雲は、そのままの姿勢で携帯の受信メールBOXを開ける。そして保存
されていた播磨からのメールを、古い順に読み始めた。
『悪いけど放課後、マンガ見てもらえないか?』
『明後日の土曜日、時間があったら会いたいんだが』
『今日はありがとな。またよろしく頼むぜ』
短い文章でも、それは彼女にとって宝物だった。特に彼への想いに気付いてから今日まで、何度
読み直したことだろう。携帯電話は携帯電話であると同時に、絆を感じさせる宝物入れでもあった。
だが今、それを読む八雲の顔には表情は無い。仮面を被ったかのように眉一つ動かさず、ただ黙々
と読み直す様は、いっそ異様ですらあった。
最後のメール。
『じゃあ明日、十時に駅前でな』
ふと八雲は時計を見る。メールの中の明日は、もう昨日になってしまっていた。その『昨日』が
始まる頃、高鳴っていた胸は今、静寂に凍り付いている。
もう一度彼女は、最初のメールに戻る。
『悪いけど放課後、マンガ見てもらえないか?』
八雲の親指が携帯の上を走った。
最後のボタンに触れる直前、躊躇したかのように止まった指は、しかしすぐに動いて押し込む。
『メッセージを一件消去しました』
画面に浮かび上がる文字が、遠くのものであるかのように八雲は見つめていたが、すぐに、再び
親指は動き始めた。
『メッセージを一件消去しました』
『メッセージを一件消去しました』
『メッセージを一件消去しました』
次々と彼女は、宝物であったはずのメールを消去していく。
真暗な部屋、携帯のわずかな光に浮かび上がる八雲の顔、そこには何の迷いもない。ただ与えら
れた作業を繰り返す機械のように冷たい。だが瞳にだけは、微かに感情の光がたゆたっている。
いや。正確には、感情の『闇』か。
そこにあるのはただ、絶望だけだったから。
『じゃあ明日、十時に駅前でな』
八雲はもはや何の躊躇いもなく、ボタンを押す。
『メッセージを一件消去しました』
- 56 名前:End of Everything :04/07/04 02:15 ID:nUoXiSLg
- 全ての彼からのメッセージを消してしまった今、携帯電話はもはや、宝物入れではなくなった。
それはただの箱に過ぎなかった。
光が自動的に消えるまでの間、八雲は画面を見続けていた。
そして彼女は、携帯を折り畳んで閉じる。
パチン。
乾いた音が室内に響いた。
八雲には、それが全ての終わりを告げた音のように聞こえたのだった。
そう。
全ては終わったはずだった。
彼女が彼の想いを諦めると決めた、この時に。
だがそれは終わりではなかった。
神様はまだ、終わらせようとしなかった。
八雲の願いとは裏腹に、事態はまた動き出す。
翌日の朝、教室に入った彼女が見たものは。
黒板に大きく書かれた、播磨と八雲の相合傘だった。
――――幸か、それとも不幸か――――
- 57 名前:クズリ :04/07/04 02:19 ID:nUoXiSLg
- 支援、どうもですm(_ _)m
どんどん八雲が八雲じゃなくなってる気がします……ううん。もはやスクランじゃないような
……
あのキャラ達でシリアスって、ある意味、当たり前なんですよね。そこを外してくるから、
仁丹は神様なんだなぁ、とふと思う今日この頃でした。
ま、それは置いておいて。
拙い作品ですが、どうか皆様、よろしくお願いいたします。
- 58 名前:Classical名無しさん :04/07/04 02:21 ID:cqElxPqQ
- GJ!
…なんだがきっつぅ…
- 59 名前:Classical名無しさん :04/07/04 02:21 ID:CIAd2fJ6
- >>57
クズリさん、いつも乙です。
相合傘ですか、うーん続きが気になるなぁ。
無理はしないで下さいね。
次回、どうなるんだろうな
- 60 名前:Classical名無しさん :04/07/04 02:22 ID:gFdEljq2
- この野郎…
俺おにぎり派でもないのに、泣きそうになったじゃねーかよ…
天満と沢近がどういうアクションを起こすのか
激しく気になります
- 61 名前:Classical名無しさん :04/07/04 02:35 ID:bJk6vnlE
- 切ない…先の展開がが読めない。読める筈が無い。
ただ言いたい……ありがとう
- 62 名前:Classical名無しさん :04/07/04 02:47 ID:19PaYkSs
- 是非とも、最後は、
播磨&八雲の、ハッピーエンドで
お願いします。m(−−)m
- 63 名前:Classical名無しさん :04/07/04 04:07 ID:MiQ7djUw
- そろそろ播磨に想いを伝える展開ですね。
- 64 名前:Classical名無しさん :04/07/04 07:19 ID:jCJ2GJLk
- クズリさん相変わらずグッジョブです!
スクランって本編がラブコメっていうかラブギャグだからか
こういうシリアス系ストーリーは新鮮ですね。
ネタバレ護身中はクズリさんのSSが俺のすべてです。
- 65 名前:Classical名無しさん :04/07/04 08:12 ID:xecmFqCs
- >>57
あはは、切な過ぎるぜコイツぅ_| ̄|○
泣く。
- 66 名前:Classical名無しさん :04/07/04 08:28 ID:vkKqsNZM
- 切なくて部屋で転げました。
GJ!
- 67 名前:Classical名無しさん :04/07/04 08:52 ID:KVejJJ2E
- ぬぅむ・・・毎度のことながらGJですな。
クズリさんのシリーズが終了するまで自分の駄作は投下できん。
- 68 名前:Classical名無しさん :04/07/04 09:35 ID:QleCEqhQ
- クズリさんGJです。相変わらず文句なしです。次も期待してます。
- 69 名前:THE TIME MACHINE 回想以前 :04/07/04 10:07 ID:5f3ycLSI
- 沢近愛理にとって、日本という国は故郷ではあれども、なにか疎外感を覚えずにはいられない場所
だった。
イギリスで過ごした幼少の砌、アングロサクソンともモンゴロイドとも言い切れないその容姿にコ
ンプレックスを感じたこともあった。
けれど、物心ついてからの彼女はずっとイギリスで生活してきたし、国籍を分別するような場面に
もほとんど出会わなかった(それは多分に家柄が絡んでいたが…)。
ロンドンでの何不自由ない生活が彼女のすべてであり、世界であった。
自分が日本人である証は、勉学として時折使うカタコトの日本語と自らの姓名、そして母親の柔和
な笑顔だけ。
遠くて遠い国。関係のない国。それが彼女の答えだった。
転機が訪れたのは、彼女が15歳になった年の初冬のことだった。
日本への移住、日本の高校への進学。
予想だにしなかった決定が、次々と彼女の頭上をかすめていった。
日本に対する漠然とした不安と、自分の意思とは無関係に進められていた話ということで反対はし
たが、
「とにかく一度、日本を見てきなさい」という父親の言に逆らうことができず、数日後、彼女は機上
の人となった。
降り立った地は、決して自分を歓迎してはいない。沢近の感想は概してそういった類のものであっ
た。
自分に向けられる無思慮な視線。読めない言語があふれる街中。異端である自分を否応なしに思い
知らされた気分だった。
(自分の生まれた土地に来て、ひとりぼっちになるなんて皮肉なものね)
無論、周囲にはお付きの人員が控えている。それすらも鬱陶しくて、彼女はホテルを後にした。
せめて、知っているところへ行ってみよう、と。
- 70 名前:THE TIME MACHINE 回想以前 :04/07/04 10:09 ID:5f3ycLSI
- 自動ドアが静かに開き、ひとりの少年が姿を現した。背後にはATMが見える。
いいかげんくたびれた黒いジャンパーに、これまた安物の代名詞だと言わんばかりのジーンズ。
貧乏人の看板を掲げて歩く少年・播磨拳児15歳は、それでも幸せなエクボを隠そうとしなかった。
なにせ今、彼の手には大金が握られているのだ。これで地獄の日々から解放される、彼は安堵と期
待に胸を膨らませていた。
見るからに分厚い封筒に頬擦りしていたとしても、誰も文句は言えなかっただろう。
赤の他人にもそう思わせるほど、彼の顔面筋はだらしなく緩んだ表情を作り出していた。
そのふやけた面が、公園の角を曲がった時である。
くしゅん、ひとつ。くしゅん、またひとつ。
舗道に設置されたベンチの上で、大きくはねたツインテールの金髪が揺れていた。
キャミソールにこごえた身体。均整のとれた顔立ちは、その青白さのためか幾分こけてみえた。
(なんだ、外人か?)
思わず見やった視線と視線が交錯する。目が合ってしまうと、嫌でもその困ったような姿に惹き付
けられた。
こうなったら、もう助けないわけにはいかない。播磨拳児とはそういう男だった。
(こういうときはなんて言うんだ? このまえ雑誌で見た……えーっと、えっとぉー、そう!)
「フ、Who Are You?」
「タクシーって、この辺でも捕まる?」
あ、日本語でいいんすか。播磨は頭を切り替えた。
「まあ、待ってりゃそのうち流れて来るだろうけど……」
「ふぅん。京都って何分くらいで着くの?」
へ?
「京都に? タクシーで?」
(どれだけかかると思ってんだよ)
沢近に日本の地理感覚を求めるのは酷であったが、播磨に諸事情を推し量ってやれというのもこれ
また酷な話だ。
しかし人間、あざけるような物言いには敏感になる。
- 71 名前:THE TIME MACHINE 回想以前 :04/07/04 10:12 ID:5f3ycLSI
- すっくと立ち上がった沢近は、播磨を睥睨すると、
「もういいわよ、捕まえてみれば分かるんだから」
勢いで車道に飛び出す、その腕がつかまれた数瞬の間をおいて、猛然としたスピードの乗用車が走
り抜けた。
「ここ見通しワリぃから気ぃつけろバカ。京都に行きたいんなら、新幹線かバスで行け」
これはヤバいのに関わっちまったかなと思ったが、とりあえず腕を引きベンチへ座らせた。
「ってか、んなカッコしてたら風邪引くって」
「盗まれたのよ」
「はぁ?」
「だから盗まれたって言ってるでしょ! コートが! 道には迷うし、あんたみたいなのには出会う
し、もう最低だわ」
なんで見ず知らずの男にこんな話してるんだろう。しかもこれでは八つ当たりではないか。という
沢近の後悔は間違いではない。
なぜなら、播磨もそう思っていたから。
(なんなんだよこの金髪女。もう帰るか……)と、きびすを返しかけた矢先であった。
小さなクシャミがまたひとつ増えた。
ったくしゃあねえなと呟く播磨。
と、顔を伏せた沢近の肩に、ふわりと何かが投げ掛けられた。
「やるよ」
見ると、さっきまで播磨が着込んでいた革ジャンである。
見上げる沢近の顔はまだ無表情ではあったが、大きく瞠った目が播磨には印象的に映った。
革ジャンを脱いだ下は、よれたタンクトップ一枚であった。
いくら秋の気配をまだ其処此処に感じる時節とはいえ、その姿を見ているだけで背中に寒風が入り
込みそうな格好ではある。
それでいて震えもせず、何事もないかのように振舞う播磨に、
「まるで猿ね」
表情を変えないまま、沢近は言い放った。
一笑にすら付さないところを見ると、どうやら本気でそう思っているらしい。
「うるせー、文句あるなら着るな」
- 72 名前:THE TIME MACHINE 回想以前 :04/07/04 10:14 ID:5f3ycLSI
- 明らかにムッとした表情に 沢近は苦笑いしながら、
「好意は素直に受け取っておくわ。近日中にお礼とコレ返しにやらせるから、アナタの住所と名前、
渡しておきなさい」
手帳を破いて差し出す。だが播磨は一顧だにしなかった。
「いいよ、やるって。それよりな、もう二度とあんな真似すんな。アブねえからよ」
「そういうわけにはいかないわ。うちの家名にかかわるもの。さあ、早く書きなさいよ!」
「だからいらねー、つってんだろ!」
双方とも、相手の気持ちを忖度する気振りすらみせない。なにげに会話が噛みあってないのもご愛
嬌か。
「アナタね、あたしの名前知ったらそんな口利けなくなるんだから」
「知らねえよ、お前なんか。なに当たり前のコト言わせんだよ」
ハ、と胸を衝かれた気がして、沢近は二の句に詰まった。
つい俯いてしまい、苦し紛れの一言が、
「わかった、貰う、コレ貰うから」
なんて、まるで降参したような言い条だったことに、当の本人が驚きを隠せないでいた。
お嬢様、と呼び止める声がして、二人は同時に振り返った。
いつの間にか、黒のロールスロイスが停まっている。その傍に聳えるカイゼル髭の紳士。どうやら
声の主は彼らしい。
そろそろお時間ですので、との言葉を端緒に、車と同じ色をした制服の強面たちが、沢近の周囲を
取り囲んだ。
「お、おい!?」
咄嗟に沢近を庇おうとする播磨。その手を押し退けて、さも当然のように車中の人となる沢近。
テレビでしか見たことのないような光景に呆然とする播磨をよそに、沢近はリアガラス越しに一瞥
すると、何もなかったかのように車は滑り出し、すぐに見えなくなってしまった。
(結局、京都には行きそびれちゃったな)
広い車内で、沢近はさっきの言葉を反芻した。知らないなんて、当たり前。だって知らないんだもん。
知らない国なら、知ればいいだけのことじゃない。
革ジャンの裾を軽く握った。
(ホントに変なヤツだったけど……)
少し近付いてみよう。窓の景色がほんの少し変わった気がした。そんな沢近愛理だった。
- 73 名前:THE TIME MACHINE 回想以前 :04/07/04 10:15 ID:5f3ycLSI
- なにかを忘れている。
言いようのない喪失感を抱えて、播磨拳児は一人うろついていた。
先ほどの出来事には驚いたが、それではない。さまよう心と同調するかのごとく足早になっていた。
ふと目をやった先には、ロゴが大々的にマーキングされた某銀行のシャッター。
播磨の身体に、稲妻が落ちた。
「……俺の金!?」
播磨にとって、あの金は文字通りの生命線であった。
振り込まれた生活費・家賃・バイト代・後輩から巻き上げた小遣い、〆て十ウン万円。
と、次々に場面が展開する。金髪女の肩に掛けた、ボロの革ジャン。膨らんだ右ポケット。
失くしちゃいかんと、ポケットの奥底にねじ込んでジッパーまで上げた、その周到さに自分で痺れ
た俺。
最後に思い出したのは、ジャンパーを羽織ったまま、高級車に乗って去る金髪女の姿だった。
「あ・い・つ・かぁ!」
播磨は憤怒の形相で駆け出した、はずだった。しかし、その先に姿はない。途端に腰から砕け折れ
ていた。
肝心なところに思い至ったのだ。
相手の名前も知らない、顔もはじめて見た、車のナンバーも覚えていない。……もはや取り戻す術
がない。
なにより警察にはお世話になりすぎている。今さら「俺の金を探してください」などと、のこのこ
出て行けるわけがないのだ。
せいぜい取調室に叩き込まれて、あることないこと詮索されるのがオチだろう。
京都がどうたら言っていたから、手がかりがあるとすればその辺だが、播磨少年に打開策は見出せ
そうになかった。
だめだ、これ以上考えるのはよそう。背中を流れる汗の冷たさに、播磨の精神はひたすら自己防衛
に走っていた。
播磨はゆっくりと、本当にゆっくりとした動きで立ち上がった。心なしか、髪の毛にも白いものが
混じっている。
この時点で(はなはだ自分勝手な思考ではあるが)彼女の思惑とは裏腹に、播磨の中で金髪という
ものに絶望的なマイナスイメージが刻印されたのであった。
- 74 名前:THE TIME MACHINE 回想以前 :04/07/04 10:15 ID:5f3ycLSI
- 深呼吸して心拍を整える。冷静に、そう冷静にだ。自分に言い聞かせながら……彼は燃えていた。
湧き上がった憤りを抑えつける、などという殊勝な心がけなど、この年頃の少年に期待できるわけ
もないのか。
なんとかなるという楽観も見え隠れするが、とりあえず八つ当たりできるモノを探して、播磨は再
び街へと繰り出していった。
彼はまだ若かった。
……その三十分後。彼は高校時代を通じて想い焦がれることになる女性との、運命的な邂逅を果た
すのである。
何も知らない、そんな二人の出会いであった。
尚、この忌まわしい記憶は播磨の腹蔵に封じ込まれ、その後三週間にわたる極貧生活の故に、永遠
に世に出る機会を逸したことを付記しておく。
了
- 75 名前:Classical名無しさん :04/07/04 11:44 ID:KfToacVA
- >>74
播磨が不憫でならねぇ。
けどワロタ
- 76 名前:Classical名無しさん :04/07/04 12:18 ID:9u9mt3js
- >>74
GJ!
沢近のお嬢様さがイイね。
こんな出会い方も良いじゃないですか。
- 77 名前:Classical名無しさん :04/07/04 13:18 ID:xecmFqCs
- >>74
京都か……遠いな。
でもまあ、こういうのもアリですね。
- 78 名前:空振り派 :04/07/04 14:42 ID:6eTwTZIc
- 本編の流れを無視して、縦笛投下いきます。
前回の反省を踏まえて文章を見直したので少しはまともになってればいいですが。
- 79 名前:THE PLEDGE :04/07/04 14:43 ID:6eTwTZIc
- 「各自、来週までに希望する進路を提出するように」
HRが終わり、放課後になっても美琴はまだ悩んでいた。
机の上に置かれた一枚の紙をじっと見つめる。
第一希望 ○○大学医学部
第二希望 ××看護専門学校
先輩と同じ大学に行く理由も無くなっちまったけどな……。
ふとこの夏のつらい出来事が頭を過ぎった。
「美コちゃんって看護士になりたいの?」
見上げると天満が覗きこんでいた。
「か、勝手に見るんじゃねぇよ」
とっさに紙を隠す。
「なんで〜?」
天満は興味津々の様子。
「身体を動かす仕事のほうが性にあってるからな」
「それに……」
- 80 名前:THE PLEDGE :04/07/04 14:43 ID:6eTwTZIc
- ――美琴には忘れられない記憶があった。
あれはそう、小学3年生の頃。
学校の帰り道で一人歩きながら花井の事を考えていた。
アイツは最近変わった。道場や学校にも毎日出てくるようになった。
泣いたり、いじけたりすることもなくなった。
もう私が守ってやらなくても大丈夫。
だけど一緒に帰ることもほとんどなくなり、少し寂しくもあった。
そうこう考えていると目の前の交差点に花井が現れた。
「ハッハッハ! ミコちゃん。僕は生まれ変わったのだ!」
……は?
包装紙で作られたマントにダンボール製のシルクハット。
まるで場違いな特撮ヒーローのような格好で仁王立ちしている。
言葉遣いまで別人のようだ。
「では、さらばだ!」
あっけに取られる美琴を尻目に手を振って走り去っていく。
――と、その時!
「あ、危な……」
交差点を飛び出してきた車にぶつかり、ドンという鈍い音がした。
ゆっくりと倒れこむ花井。まるでスローモーションのモノクロ映画のように……。
- 81 名前:THE PLEDGE :04/07/04 14:44 ID:6eTwTZIc
- 「花井ーーー!!!」
突然の出来事にどうしていいかわからず、呆然と立ち尽くす。
どれくらい長い時間だったろうか? 救急車のサイレンの音だけが、耳の奥
から離れなかった。
両親につれられてようやく落ち着きを取り戻し、病院へやってきた。
病室から出てきた看護婦さんに思わず駆け寄る。
「花井は? 花井は?」
目から大粒の涙がぼろぼろとこぼれた。
彼女は私と目線をあわせるようにしゃがみこんでこう言った。
「お友達は大丈夫! 少し身体を打っただけですぐに治るわ」
「そんなに泣いてちゃ、せっかくのかわいい顔が台無しだゾ」
暖かい手が私の頬をそっとぬぐった。
その姿は強く優しく、そしてとても美しく見えた。
ベッドを覗き込むとまるで何事も無かったかのような花井の寝顔があり、
安堵のため息がこぼれた。
そして一人、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「私、大きくなったら看護婦さんになる」
「花井がどんなになっても私が必ず治してあげるから!」
- 82 名前:THE PLEDGE :04/07/04 14:44 ID:6eTwTZIc
- ――そして、現在
我ながら恥ずかしい話しだよな……。
そう思いかえし、照れながら天満に一言だけ答えた。
「昔、子供のころに約束したんだ……」
だが天満は聞いておらず、通りかかった花井に言葉を投げかけた。
「花井君。美コちゃん、看護士になるんだって〜。似合うよね〜?」
花井は即答した。
「周防が看護士だって? そりゃ、無理だろ。ハッハッハ!」
ミシ……。美琴の正拳突きが花井の顔面にめりこんだ。
「バッキャロー! テメーなんか馬に蹴られて死んじまえ!」
「スマン、周防。何もそこまで怒らんでも……」
花井はゆっくりと崩れ落ちた。
- 83 名前:空振り派 :04/07/04 14:45 ID:6eTwTZIc
- 以上です。
縦笛といいこの二人にまつわるエピソードは結構多そう。
花井の子供時代と現代の変わりようは、やっぱヒーローものの特撮やアニメを見て
研究したんだろうな(笑)
あとこの看護婦さんは例のお姉さんのつもりです。年齢的にはギリギリかも。
- 84 名前:揚げ足 :04/07/04 18:01 ID:8hW3dnLo
- チックで申し訳ないですが
>>69
播磨は後輩から小遣い巻き上げたりいないはず。
テスト以上にカツアゲはいらない人ですから
>>79
医学部は医者になる人が行くところで
看護学部の方が良かったです
細かいとこですが 、こういうのでひっかかると
すんなり世界に入っていけないので気をつけませう
- 85 名前:Classical名無しさん :04/07/04 18:26 ID:Sz5R8Z9o
- >84
更に揚げ足ですが、別に医学部でも問題ないですよ。
参考までにどーぞ。
http://shingaku.edu.yahoo.co.jp/bin/detail?cd=SC000017&type=gak&ken=026&ga=ST000029&n=2
http://shingaku.edu.yahoo.co.jp/bin/detail?cd=SC000056&type=gak&ken=027&ga=ST000029&n=2
http://shingaku.edu.yahoo.co.jp/bin/detail?cd=SC000003&type=gak&ken=038&ga=ST000033&n=2
などなど。
- 86 名前:Classical名無しさん :04/07/04 18:40 ID:8hW3dnLo
- >>85 いや、それならせめて看護学科つけてくれというか。
大学医学部と看護専門学校並べられると違和感あってそこで引っかかったもんで。
- 87 名前:Classical名無しさん :04/07/04 18:57 ID:xCZdSJgM
- カツアゲくらい中学時代はしてたかもしれないね、
そのほうが天満に出会って変わったって感じになるし。
- 88 名前:Classical名無しさん :04/07/04 19:15 ID:x8Kxp7jE
- 俺は中学時代は喧嘩馬鹿みたいなイメージがあるな
- 89 名前:Classical名無しさん :04/07/04 19:21 ID:dJ7g79gg
- >>87
1巻でカツアゲの次に勉強はいらないって言ってるから、カツアゲはしてないのでは?
- 90 名前:空振り派 :04/07/04 19:58 ID:6eTwTZIc
- >>84
まさかそこで突っ込まれるとは・・・orz
一応調べてから書いたんですが、確かにまぎらわしくて申し訳ない。
吊ってきます。
- 91 名前:Classical名無しさん :04/07/04 20:30 ID:Fxxuq7bM
- 限定版でも警察に補導されている時の顔はボコボコなので、喧嘩馬鹿のほうが自然だと思う。
- 92 名前:クズリ :04/07/04 22:38 ID:nUoXiSLg
- 実は限定版を持っていないクズリです。当日の午後に行ったのにないなんて_| ̄|○
皆様、どうも感想ありがとうございます。このような拙い作品を楽しんでいただき、本当に
力づけられます。あまつさえ、私ごときの体を心配して下さる方までおられて……感激です。
学校、休みなんで大丈夫ですよ〜やらなきゃいけないことはあるんで、睡眠時間は確かに
削ってますが、今のところ大丈夫です。
では投稿させていただきます。
前スレからの続きですが。
『Without Me』 >>191->>197 同改訂版→SS保管庫@分校
『Crossing Border』 >>318->>330 同改訂版→SS保管庫@分校
『She wants to mobe』 >>345->>355
『Don't go away』 >>391->>399
『Where I End and You Begin』 >>498->>507 同改訂版→SS避難所スレ@分校
『Rollin'』 >>539->>549
『You Just Don't Know Me At All』 >>589->>595
『End of Everything』 >>48->>56
に続いて。
『On the Edge』
- 93 名前:On The Edge :04/07/04 22:39 ID:nUoXiSLg
- その日、八雲の目覚めは最悪だった。
無理もない、か。そう心の中で呟いて、彼女は身を起こす。時計の針は六時を指している。この
時間に起きて、二人分の弁当と朝食を作るのは、体に刻み込まれた習慣だ。たとえ寝たのが深夜遅
くだとしても、目が覚めてしまう。
まだぼんやりとする頭で、彼女は昨日のことを思い出す。
「そっか……姉さんと……」
他に誰もいない部屋で、八雲は一人呟く。その言葉と共に、頭にかかっていた靄が消えていき、
意識がはっきりとしてくる。
少し迷った後、八雲は体を起こした。このまま寝ていたい、と体が出す悲鳴を無視し、のろのろ
と制服に着替えて、彼女は台所に向かった。
そしてエプロンを付けて、下ごしらえを始める。
今日ぐらいは……そう思ったのは事実だった。だが学校には行かなければならない。一方で、姉
と顔を合わせたくはない。
結局、彼女が選んだのは、天満が起きるよりも早く御飯を作って家を出る、という妥協案だった。
トントントン
自らが作り出す包丁の音はいつもと変わらないようで、しかし八雲には、どこか乾いて聞こえた。
そして彼女は一人、行ってきますの一言もなく、家を出た。きれいに晴れた空が彼女を迎える。
台所にはお弁当箱が一つと、一人分の朝食が残されていた。
まだ人気の少ない通学路を、昨日の雨の名残りの水溜りを避けながらゆっくりと八雲は歩く。
うつむいて顔に陰を落としていた彼女は、周囲が向けてくる視線に気付かなかった。自らの内に
目を向けるあまり、少年達の心の声すら感じていなかった。いや、それどころか、ひそひそと彼女
を見ながら噂する声すらも、耳に入らなかった。
もし少しでも聞こえていたなら、視ていたなら、彼女はそこで振り返って来た道を戻ったことだ
ろう。だがそうしなかった彼女は、辛い思いを経験せねばならなくなった。
1−Dの教室に入った彼女が見たものは、黒板に大きく書かれた、播磨と八雲の相合傘だった。
呆然とそれを見つめる八雲を、クラスメイト達がどこかよそよそしい目で眺めていた。
School Rumble
♭−ι On The Edge
- 94 名前:On The Edge :04/07/04 22:40 ID:nUoXiSLg
- 誰が、何故、どうして、いつ、ここに。疑問符が次々とわいて頭の中を占領する。呆然と辺りを
見回すが、その視線を避けるようにクラスメイト達は顔をそらした。
「おはよ、八雲」
肩をぽん、と叩かれ、思わず八雲は体を強張らせる。おずおずと振り向くと、そこには昨日、遅
くまで話していた友の姿があった。
「何よ、そんなに驚いた顔して。どうかした?」
言って笑うサラの顔は明るい。だがその明るさに少しだけ影があるように見えたのは、きっと昨
晩、彼女と交わした会話のせいだろう。無理をさせてしまっているのだろうか。辛うじてわずかに
残っていた冷静な意識がふと、そんな思いで占められる。
「…………!!」
ちょっとだけぎこちない、だが優しい笑顔はしかし、八雲の肩越しに見えた文字を見た瞬間に硬
いものへと変わる。
つかつかと足音をたてて黒板に近づき、荒々しく相合傘を消したサラは、振り向きざまに教壇を
思い切り叩いた。
ドンッ。
響く強烈な音にさざめきは消え、教室の中の全員の視線が、肩を怒りに震わせた金髪の少女に集
中する。
「誰っ!?こんなこと、書いたのはっ!?」
その小さな細い体躯からは想像できないほどの大声に、誰もが圧倒されている。それは八雲も例
外ではない。
ただ、彼女は既視感を覚えてもいた。それは八雲がサラと初めて出会い、仲良くなるきっかけと
なった出来事を思い出させたのだ。あの時、おびえる八雲を守ろうとサラは野犬の前に飛び出し、
その一喝で退散させたのだった。
今の彼女の姿は、それに重なるものがあった。それはつまり、八雲を守ろうとする意識の表れな
のかもしれない。
「誰なのよっ!?」
声と共に居並ぶクラスメイトにサラが向けた鋭い視線、そこから逃げるように目をそらした幾人
かの名前を彼女は呼んだ。そして、
「何よっ!?貴方達がこんな最低なことしたの!?」
「ち、違うわよ、サラ」
「俺達が来た時にはもう……なぁ?」
「そうそう。ほんと、俺ら知らないんだって」
- 95 名前:On The Edge :04/07/04 22:40 ID:nUoXiSLg
- 口々に言う少年少女の目を見据えていた彼女は、その言葉に嘘がないことを感じ取ったのか、
「ごめんなさい、疑って」
素直に謝罪の言葉を口にする。が、
「あ、ああ、別にいいけどさ……」
「でも、消さなかったんでしょ?知ってて」
責めるのを止めることはしなかった。
普段が穏やかな分、彼らの目にはサラの怒りの形相はすさまじいものに映り、またそれだけに余
計に、見る者に深い罪悪感を覚えさせた。
うつむくクラスメイト達をゆっくりと見回すサラの姿に、登校してきたばかりの生徒達も異変を
感じ取り、教室は重い沈黙に包まれる。
「あ、あのね、サラ」
おずおずと一人の少女が手を挙げた。
「貴方がやったの?」
「ち、違うわよ。けど、多分、これが原因だと思って……」
鋭い視線と問いかけに色を失いつつ、少女は彼女に近づいて携帯の画面を見せた。
それを覗き込んだサラは、すぐに眉を顰め顔色を変えた。雪を欺く白の肌が、怒りに赤に染まる。
「どうしたのよ、これ」
口調は静かだ。だからこそ余計に、そこに含まれた感情の深さが聞く者の耳を打つ。おずおずと
少女は答えた。
「ん……と、昨日、メールで届いたの」
「……誰から?」
「違うクラスの友達……今日来て聞いてみたら、この画像届いたって人、多いんだって……」
険しい顔のサラは、にらむようにその画像を見つめる。
「……どうしたの?」
二人のやり取りを不審に思った八雲が、サラの後ろから覗き込む。はっと息を飲んでサラは、彼
女の目からその画面を隠そうとしたが、時はすでに遅かった。
「……え?」
上がった虚ろな声にサラが、そして携帯を差し出していた少女が固まった。
八雲がそこに見たのは。
『夕焼けの中、播磨の肩に頭を預け、幸せそうに眠っている』自分の姿だった。
- 96 名前:On The Edge :04/07/04 22:44 ID:nUoXiSLg
- 「じゃあプリントを後ろに回してくれ」
朝のHR。刑部絃子の声は、しかし八雲の耳に届いていなかった。前に座る少女が後ろ手にプリ
ントを渡そうとするが、それにも気付かず、膝の上で組んだ手を見つめ続ける。
彼女の目の前に、あの画面がちらつく。画像のちらつきがひどく、おそらく遠くからカメラ付き
携帯で撮ったものだろう、とはサラの言葉だった。
確かに眠っていた自分はともかく、播磨も何の反応も見せていないことから、気付かれないよう
にこっそりと撮られたものだろうということは八雲にもわかった。
すっと机の上に置かれたプリントにはっと顔を上げるが、それと同時に前の少女はさっと顔を元
に戻す。ごめんなさい、そう口にしかけて、しかし果たせず八雲はプリントを後ろに回す。
サラがHRまでに聞いて回ったところ、その画像はかなり多くの生徒が持っているらしかった。
誰が撮ったかはともかく、例え画像が悪くてもそれが播磨と八雲であることは誰の目にも明らか
だったため、不思議に思いつつもそのスキャンダラスな画像を友人に回したと告白する者もいた。
「何を考えてるのか、わからない」
怒りに顔を真っ赤に染めながら、サラは言っていた。八雲が男の子と二人でいることが、そんな
におかしいことなの、とも。
気まずそうに顔を見合わせるクラスメイトを前に、目の端に涙すら浮かべながら抗議するサラの
剣幕は、八雲が間に入らなければ収まらない程だった。
「サラ、もういい」
「でも!!」
「いいの……」
顔を紙のように真っ白にさせながら、それでも何とかそう言う八雲の姿に、何かを感じたのか、
サラは次の言葉を飲み込んだ。ただ最後に一度、強い眼差しで辺りを見回して、彼女は自らの席に
戻っていった。後に残ったのは気まずい沈黙のみ。
「何だ、今日はやけに静かだな」
HRに来た絃子の言葉に、答える者は誰もいなかった。微かに不審そうな顔をした後、黒板を見
て彼女は動きを止める。
よほど強く力を込めて書かれたのか、サラが消してなお薄く黒板に残っていた相合傘に、彼女は
眉を片方跳ね上げた後、
「また下らないことを」
小さく、だが聞こえよがしに呟いて彼女は、二人の名前と傘が完全に消えるまで、黒板消しを何
度も往復させたのだった。
- 97 名前:On The Edge :04/07/04 22:45 ID:nUoXiSLg
- 誰に、とか、どうして、とかはもう、八雲にとってどうでもいいことだった。
ただ情けなく、ただ辛かった。
見られたこと、そして撮られたこともある。だがそれ以上に、周囲の……サラ以外の生徒達が彼
女を見る目が心に突き刺さった。
それはおそらく、好奇の目なのだろう。
不良として有名な播磨拳児、彼が全校生徒のアイドルと目される沢近愛理と良い仲だという噂は
依然として消えていない。
口さがない者は、二人がすでに付き合っていて、学校での二人の態度は照れ隠しに過ぎない、な
どと評している。そして話題性だけが一人歩きし、もう一線を越えているはずだの、いやホテルか
ら出てきた所を見ただのと言い出す者もいた。
そこに八雲が現れたのだ。
思春期の少年少女にとって、この三人の関係が格好のネタになることは自明の理だった。
何よりも彼女は、愛理に勝るとも劣らぬ美人として男性の注目を集めていた。携帯で撮られたそ
の画像がたった一夜でこれだけ広まったのも、彼女に寄せられる関心の大きさを表していると言え
るだろう。
加えて、気が向けばデートの誘いも断らない愛理とは異なり、八雲は男性へのガードが固い。そ
の彼女が、播磨と二人きり、しかも恋人のように寄り添い眠る姿が、彼らの想像力をかきたてたと
考えるのは難しいことではない。
もちろん、これは八雲が考えたことではなかった。恋を知ったとはいえ、元々が恋愛音痴な彼女
のこと、そこまで深く他人の心の動きを読むことは出来なかった。
だから、本来ならば彼女は、自分に向けられた視線の意味を理解することなどなかっただろうし、
それだけに傷も浅くて済んだのだろう。
だが。
彼女は『力』を持っていた。
自分を好きな男の心が視えるという『力』が。
耳を塞いでもなお聞こえてくるその声に、八雲の心は押しつぶされそうになっていた。
- 98 名前:On The Edge :04/07/04 22:46 ID:nUoXiSLg
- 何だよこれ略奪愛ってやつ?塚本も意外とやるんだなぁけどあの播磨ってそんなにいい男かそれ
とも不良なとこに惹かれたのかな?
声は止むことなく、八雲に向けられる。
畜生こんなことになるならもっと前に塚本にしっかり声かけとくんだったーけど二人が争ってど
ちらかが余るわけだしそしたら俺にもチャンスあるよな
視られることなど考えていない思念、そして思春期の欲望は暴走する。
やっぱあいつともうヤッチャッタのかな塚本も可愛い顔してやるこたやってるんだなくそっ羨ま
しいぜ
想いと共に伝わってくるイメージの中には、少女の想像をはるかに越えたものもあった。
三角関係かーこれからドロドロすんのかないや待てよ不良なんだし二股とか?あ、二人同時とか
もやってるのかもな
蹂躙される裸の自分を視るのは、決して初めてのことではない。だが今日ほど具体的に視えたこ
とはなかった。
そして彼女の相手として描かれるのは、播磨拳児だった。少年達の勝手なイメージに歪められた
彼の姿は、八雲の知るそれとはかけ離れていた。多分に八雲を奪われたという嫉妬が含まれている
からか、まるで悪魔か何かのよう。
八雲は心を閉ざしてしまいたかった。何も視たくなどなかった。それでも声は聞こえてくる。視
えてしまう。
少年達は今、真面目な顔で絃子の話を聞いている。しかしその下で、彼らは妄想を働かせている
のだ。
健全な思考なのかもしれない。だがそれを感じる八雲にとっては、ただただ不快感を招くもので
しかなかった。
頭の中に入り込んでくるイメージの波に、彼女の心は震え、腹の底からは吐き気が沸きあがって
くるのだった
- 99 名前:On The Edge :04/07/04 22:47 ID:nUoXiSLg
- 「……塚本……塚本?」
はっと顔を上げると、彼女の席の横にいつの間にか、絃子が立っていた。
「いつもみたいに寝てた……というわけじゃないようだな」
そっと手を伸ばしてくる彼女に、八雲は一瞬身を凍らせる。それに構わず、絃子は彼女の前髪を
上げて額に触れた。
「……少し熱があるな。それに顔色が悪い」
いつもと変わらぬ静かな声、しかしそこに確かにいたわりを感じ、八雲は体の力を抜いた。確か
に熱っぽい。それは精神的なものばかりとは言えなかった。
「サラ。悪いが八雲を保健室に連れて行ってやってくれ」
「はいっ!!」
勢い良く立ち上がったサラもまた、八雲の変調を案じていたのだろう。八雲に肩を貸して、教室
を出る。
「ありがとう、サラ」
微かに荒い息の下から八雲が礼を言うと、
「ううん、いいのよ」
サラは慈母の笑みを浮かべた。だがそれは次の瞬間、微かに曇る。
「……気にしてるの?」
「……大丈夫」
短い問いに短く答え、八雲はサラの肩に体を半分預けながら歩く。
どうやら本当に体を壊してしまったらしい。自らのおぼつかない足取りに、八雲はそんなことを
考えたのだった。
「また来るから」
席を外しているのか、誰もいない保健室のベッドに八雲を寝かせた後、授業があるサラは最後に
そう言い、手を振って帰っていった。
手を小さく振り返し横になった彼女の意識は、あっという間に闇に引きずり込まれていった。
人の気配に目を覚ますと、覗き込んでくる人影に気付く。
「あら、起こしちゃった?ごめんなさいね」
寝起きで呆とする頭を無理やり働かせ、保健室にいることを思い出す。そして今、ベッドの脇に
立ち、自分を見ているのは。
「どう?気分の方は。うなされてたみたいだけど」
新しく保険医になった女性だった。
- 100 名前:On The Edge :04/07/04 22:46 ID:nUoXiSLg
- 「うーん、熱がまだちょっとあるわね〜」
八雲が脇から取り出した体温計を見ながら、彼女は言った。
名前が思い出せず考えていた八雲は、ようやく姉ヶ崎という姓を思い出す。
「風邪かしら?とりあえず風邪薬、飲んだら?」
「あ……ありがとうございます」
棚から薬を取り出す姉ヶ崎に、八雲はベッドに体を起こして頭を下げた。にこりと笑う彼女の顔
に、どこか心温まるものを感じつつ、八雲はコップと水を受け取る。
「そういえば……」
椅子に座りながら、ふと姉ヶ崎は問いかけてきた。
「うなされて誰かの名前を呼んでたみたいだけど……好きな人の名前かしら?」
「……!?」
驚いて目を白黒させる八雲は、何とか水を噴出すのをこらえた。大丈夫、と心配そうに彼女は背
中をさすってくる。
夢を見ていた。どんな内容だったかは忘れてしまった。
ただ、自分と播磨が恋人同士だった、ということだけは覚えていた。
もしかして、播磨の名前を寝言で言ってしまったのだろうか。だとしたら……恥ずかしい。硬直
する八雲だったが、しかし、姉ヶ崎はクスクスと口元に手を当てて笑い出す。
「ああ、ごめんなさい。冗談だったんだけど……」
「冗談……?」
からかわれたのだと知り、少し恨めしそうに見てくる八雲に、姉ヶ崎は両手を顔の前で合わせて、
「ほんと、ごめんなさい。そういうつもりじゃなかったのよ?」
照れ笑いを浮かべながら謝る彼女のその仕草が、何だかとても可愛いものに見えて、八雲はつら
れたように小さく笑う。
「でも、そんな反応するってことは、図星だったりするのかしら?好きな人の夢を見てたの?」
だがそれもほんの一瞬のことだった。姉ヶ崎の言葉に、八雲は表情を暗くする。
思い出すのは、昨日のこと、そして今日のこと。
あの現実になりえない相合傘が、心の底を突いてきて鈍い痛みを覚える。
ダメ。もう好きじゃないのだから。自らに言い聞かせるが、その痛痒感は消えない。
どこか苦しそうな彼女の顔を、姉ヶ崎がじっと見つめていた。
- 101 名前:On The Edge :04/07/04 22:47 ID:nUoXiSLg
- 「……辛い恋でも、してるのかな?」
唐突な姉ヶ崎の言葉に、八雲は両の手を強く握り締める。
「いえ……」
「そう」
八雲の言葉を受け止めて彼女は、口を閉ざす。その沈黙が、次の言葉を催促してるかのように思
えて、彼女は顔を上げた。
「もう……好きじゃないですから」
不思議に思った。どうして自分は、この初めて会う女性に、こんなことを話しているのか、と。
彼女はじっと八雲を見つめてくる。その瞳は暖かく、少女を包み込む優しさに満ち溢れている。
軽く縦巻きにした長い髪、つぶらな目、柔らかそうな唇の姉ヶ崎は、八雲にはとても大人の女性に
見えた。
無理をしていたのは、体だけでなく心もだったのだろう。誰かに胸の内をさらけ出し、聞いても
らいたい。そんなふうに思うのは八雲には珍しいことだった。
そしてそう思わせるのは、姉ヶ崎の持つ雰囲気のせいなのかもしれなかった。八雲はふと、彼女
に『姉』を重ねて見ている自分に気付く。実在の姉、天満ではなく、いわば『お姉さん』。
「あら。ふられちゃったの?」
彼女が言うと何故か、その事実すら大したことがないように感じられた。心がわずかに軽くなる。
「……いえ……」
どこから話せばいいか、そして、どこまでを話すべきかを迷いながら、八雲は言葉を探す。
「貴方の好きな人に、好きな人がいる、とか?」
惑う彼女を救うかのように差し出された姉ヶ崎の言葉に、八雲は重く頷く。彼女はというと、あ
らまた当たっちゃった、などとおどけて言いながら、椅子に座りなおす。きぃと悲鳴をあげた古い
椅子に、困ったように、
「やだなぁ、太ったかしら?」
そんな何でもない一言一言が、乾いた心に染みこんで潤していくのを感じながら、八雲は彼女の
次の言葉を待った。自分からは、何を言えばいいのかがわからなくなってしまったから。
「それで?告白とかしたのかなぁ?」
膝の上に手を置いて、姉ヶ崎は彼女に問いかけてくる。
ゆっくりと大きく頭を振る八雲に、慈しみを顔に浮かべて姉ヶ崎は言った。
「そっか……辛いね」
- 102 名前:On The Edge :04/07/04 22:47 ID:nUoXiSLg
- 「先生は」
しばしの沈黙の後、八雲はふと尋ねる。
「こんな思いをしたこと、あるんですか?」
「そりゃあ、まあ。こんな年だしね」
言って軽やかに笑う彼女の顔に、影はない。だが深い。これが大人の女性の笑い、というものな
のか。色々なことを経験してきたからこそ、浮かべることの出来るその笑顔に、八雲は微かな羨望
を覚えた。
「もっとひどい思いだってしてるわよ?」
「……どんな、ですか?」
「好き合ってると思ってた人に、急に捨てられたの」
台詞と裏腹に、彼女は澄んだ、そして満面の笑顔を見せる。言って立ち上がり、彼女はベッド脇
の窓を開けた。雨に濡れた落ち葉の匂いを乗せて、わずかに風が入り込んできた。揺れるカーテン
と、栗色の長い髪と白衣の裾。
まだ微かに熱の残る体にその涼しさは心地よく、綺麗な空気が肺を満たしていく。
「つい最近のことよ〜。荒れたな〜、あん時は」
昨夜の雨を忘れたかのように晴れ渡った空に、雲は一つもない。そしてそれを見上げる姉ヶ崎の
顔にも、影はない。
「そうなんですか?」
「この学校に来るちょっと前のこと。今思えば、別れて良かったと思うんだけれどね」
けどそん時はね、やっぱりすごく好きだったしね。言って彼女は肩をすくめる。その仕草に悲壮
感はない。乗り越えたのだろう、痛みを。
「貴方は?本当にもう、その人のこと、好きじゃない?」
「………………」
彼女の言葉に、八雲は顔を背けた。
想いは、ある。
だが口に出して、形にするわけにはいかなかった。己に誓ったから。
「もう秋だね」
姉ヶ崎がふと、窓の外の空を見上げて呟いた。つられる八雲の瞳には、太陽がまぶしかった。
――――女と少女、その境目に八雲は立つ――――
- 103 名前:クズリ :04/07/04 22:51 ID:nUoXiSLg
- お姉さんもサラも別人、か……orz
どれだけのことを書くか、よりも、どれだけのことを書かないか、が難しいという言葉を
今、噛み締めています。書き始めた当初、こんなに長くなるとは想像してませんでした。
9本目ですよ、9本目。次は二桁ですよ?すでにギリシャ文字は見たこともないもの
ばかりですし。
まあそんなこと言っても、この勢いで最後まで書いてしまいたいと思ってます。途中で
投げ出すことだけはしたくないですし。
そういうことで、皆様、よろしくお願いいたします。
- 104 名前:Classical名無しさん :04/07/04 22:53 ID:tD5x5rtw
- >>103
クズリさんGJ!
やらなきゃいけない事頑張って下さい。
そして、やっぱり続きが気になる終わり方です。
- 105 名前:Classical名無しさん :04/07/04 22:55 ID:e0ROVpJQ
- GJ!
リアルタイムで拝読させていただきました
サラはほんとに八雲にとって無くてはならない存在ですねえ…姉と不仲になっている現状では特に、なんですかね
次回にも期待してます!
できることなら八雲が幸せな終わりかたにして欲しいです…
じゃないと可哀想すぎる…
- 106 名前:Classical名無しさん :04/07/04 23:03 ID:zSeUGm.o
- ただ一言、
…GJ!
- 107 名前:Classical名無しさん :04/07/04 23:14 ID:ixsgC6iQ
- GJです!!それしか言葉が出ません。次も期待してます。体には気を付けてください
- 108 名前:Classical名無しさん :04/07/04 23:33 ID:BHUs28vo
- クズリさんお疲れさまです。
あなたのおかげで最近は毎日水曜日ですよ。
もう本筋でストーリーは考えてらっしゃるようですので、作品の感想などはまとめて完結してから拙いながら書かせていただきますね。
学生とのことですが両立は大変でしょうが無理しないでがんばって神作品つくってください。
- 109 名前:Classical名無しさん :04/07/05 01:08 ID:d7VBUaVE
- 八雲って映像まで視えるのかねえ?
- 110 名前:Classical名無しさん :04/07/05 01:13 ID:EWLW9O.w
- 文章が見えるだけでしょ?
カレーの交換しに行ったら好きだって文章に流されてたじゃん
- 111 名前:クズリ :04/07/05 01:21 ID:nUoXiSLg
- 一巻→「心が聞こえる時がある」
二巻→「……また 視えはじめた」
聴覚と視覚、どっちなのかと悩んだのですが、
二巻→文字に流される八雲
だったので基本はもちろん、文章だけだと思っています。
ただ、文字だけがくっきりと視えるっていうのは、何と言うか漫画的表現で、実際は
イメージとかそういったものが伝わってくるんじゃないかな〜、と考えて書いてしまい
ました。何もない宙に文字だけが浮かんでいるよりは、説得力あるかな、と思って。
設定を変えてしまい、申し訳ありませんでした。
- 112 名前:Classical名無しさん :04/07/05 01:21 ID:d7VBUaVE
- >>110
実際は「声が聴こえる」だと思われ。
- 113 名前:Classical名無しさん :04/07/05 01:23 ID:d7VBUaVE
- わ。挟んだ。
>>111
気にすることないですよ。面白ければそれで良し。
- 114 名前:クズリ :04/07/05 01:36 ID:nUoXiSLg
- >>113
御指摘、どうもありがとうございました。感謝いたします。
- 115 名前:Classical名無しさん :04/07/05 02:05 ID:f9VRrD9o
- クズリさん、素晴らしいSSありがとうございます!
まとめて全部読みましたがもう切なくて、切なくて・・・次回も楽しみにしております!!
SS保管庫にも是非企画側に入れてもらいましょう!
「管理人さーん!観てたらSSの保管お願いしまーす!」
- 116 名前:Classical名無しさん :04/07/05 02:20 ID:J7.tcmg2
- >>100
若い女性が発熱したときに医者として最初に疑うべきは妊娠ですが....。
まぁ保険医だし、スクランだしね。
- 117 名前:Classical名無しさん :04/07/05 02:23 ID:J7.tcmg2
- ごめん。途中送信でした。
そんな訳で、風邪薬を薦める妙さんに、少し違和感を感じたことをお伝えします。
- 118 名前:Classical名無しさん :04/07/05 02:30 ID:d7VBUaVE
- >>116
お医者さんですか?
15歳の子相手でも疑うものなの?
- 119 名前:Classical名無しさん :04/07/05 02:35 ID:ibJU938g
- >>118
116ではないが、今の時代なら15才でも疑います。
「女性をみたら妊娠と思え」というのは、医者の格言として有名で、
「病気かな?」と思っていたら実は妊娠だったり……
知り合いから聞いた話では、小学生が妊娠したというちょっと信じられない話が……
完全に否定できないだけに((;゚Д゚)ガクガクブルブル
まぁSSにこんなリアルは話を持ち込んでも仕方ないですけどね( ´ー`)y-~~
- 120 名前:Classical名無しさん :04/07/05 02:54 ID:xCZdSJgM
- 怖い世の中だな
- 121 名前:Classical名無しさん :04/07/05 03:08 ID:d7VBUaVE
- >>119
知らなかった。
高校の保険医さんは大変ですね。
- 122 名前:たれはんだ :04/07/05 10:31 ID:35SedIeg
- Front Window
あーあ、まったくヤんなるわよね。
あれだけしつこく『デートしてくれ』っていうからしてあげようと思ったのに、
結局ドタキャンなんだからほんっっっとに失礼な奴よね。で、これからどうし
ようかしら。独りじゃつまんないし、このまま家に・・・って。
(フゥ(溜息))
ホント、どうしよ。って、あら?あれってヒゲじゃない?何してんのかしら?
確かあのカッコ、前に街で見たカッコじゃない?あの時はとんだ災難だったわ。
何で私が美琴から逃げなきゃ、
、じゃなくてっ!
あんな服しか持ってないのかしら?これだから・・・って、何考えてんのよ。
今はヒゲはどうでもいいの!これからどうするかなんだから。
- 123 名前:たれはんだ :04/07/05 10:34 ID:35SedIeg
- (コソコソ)
本屋?立ち読みしてる。マンガ?あんなの読んでどこが面白いのかしら?そう
いえは天満も晶も読んでたけど、天満はまぁ別として、晶も読んでるんだから
・・・まぁ彼女の場合、けっこう分からないところもあるし。結局何読んでる
のかしら?ここからじゃ分からないわね。もうちょっと近付いてっと。確かこ
れだったかしら?えーっと。何よこれ。別に面白くも・・・へぇ、これは絵が
綺麗ね。女の子向け、じゃないわね。アイツがそんなの読むわけ無いし。ちょ
っと何これって、女の子のハダカばっかりじゃないっ!こんなの読んでたなん
て、やっぱりっ、あら?次のは面白そう。『School−
あっ、ちょっ、ちょっと!忘れてた!追いかけなきゃ!
(タタタッ)
フゥ。おかげで見失う所だったわよ。今度は画材、店?絵でも書くのかしら?
でもヒゲって、美術部じゃなかったわよね。何の用かしら?ここからじゃ分か
らないわ。入る?でも気付かれると厄介だし。べ、別にいいわよね。私だって、
使用するぐらい、あるんだからっ、いいじゃないっ、別に・・・ともかく入ろ。
(シャー(自動ドアの音))
結構いろいろなものがあるのね。絵の具とか用紙だけかと思っちゃったわ。え
っと、それでアイツはっと。いたいた。何見てるのかしら?引出しを開け閉め
してるけど。何かを探しているのかしら?え?何?トーン?よく聞こえない。
何かブツブツ言っているけど、トーンって何よ?
『沢近、さん?』
『きゃっ!』
- 124 名前:たれはんだ :04/07/05 10:37 ID:35SedIeg
- ****
ビックリした。まさか、笹倉先生に会うなんて。でも、先生も用事があったみたいだし、見失わ
ずにすんだわ。まぁ、確かにあそこで出会ってもおかしくはないわよね。美術の先生だもの。公
園?今度は何かしら。結構人が多いわね。お弁当を食べている人もいる?あら、もう12時なの
ね。昼食はどうしようかしら。あいつでも誘って・・・って、なんであいつが出てくるのよっ!
あっ、隠れないとっ。
(ゴソゴソ(茂みに隠れる音))
あっ、見えたっ。猫?猫にエサ?聞こえないけど、何か言ってる。へぇ、以外ね。そういえば、
前にたくさんの動物と一緒にいたような、気のせい?思い出せない、け、ど、イヤ、思い出した
くないっ!大体っ、あの日からおかしくなったんだからっ、え?サングラスが外れてっ、てっ、
へっ?ヒ、ヒゲよね?確かに、間違いないわっ。一瞬だけだけど、間違いない。あいつの素顔を
見たのは初めて・・・初めて、よね?確か。え、えぇ?!何で赤くなってるのよ!大体、アイツ
はハゲなのよっ!それに不良だし、えっと、えっと、ともかく!今度は見失わないようにしなき
ゃ。あら、携帯?メールかしら?女?まさか、大体かける相手なんているわけないじゃない。
ようやく移動するみたい。結構この体勢も疲れるんだから、いい加減にしてよね。それで、今度
はどこに行くのかしら。
- 125 名前:たれはんだ :04/07/05 10:38 ID:35SedIeg
-
(ガヤガヤ(雑踏の音))
ここって、あのときの喫茶店じゃない。何であんな所に行くのよ。もしかして美琴と?まさか。
あのときの話だと誤解だったじゃない。それに、アイツが誰と会ったって別に関係ないわけだし。
そういえば、天満の・・・
『わぁ!愛理ちゃんだっ!』
『!!!(天満?!)』
****
結局見失ッちゃったじゃない。誰と会ってたか気になっちゃうし。もう、いい。考えるの止そう。
でも。
やめとこ。やっぱり。
終
- 126 名前:Classical名無しさん :04/07/05 11:49 ID:lYIYpbSM
- >>122-125
沢近が凄く可愛く書かれていたと思ふ。
- 127 名前:Classical名無しさん :04/07/05 12:02 ID:A1RAgOVE
- とりあえずsageて下さいとしか言いようが無い
- 128 名前:Classical名無しさん :04/07/05 12:26 ID:5CZ1ye0A
- >>127
とりあえず死んで下さいとしか言いようが無い
- 129 名前:十字架の名はサラ :04/07/05 14:15 ID:tD5x5rtw
- 「ふふ、あなたは私の物」
サラは最愛の人に拒絶され絶望に苛まれる播磨を後ろから抱いた。
全て私が仕組んだ事、こうなる様に。
あなたが欲しかったから、愛されたかったから。
例え、神も友達も全てをも裏切ってでも欲しかったから。
「大丈夫ですよ、誤解だって分かってくれます」
絶対にそれはない。
播磨先輩を十字架に張り付けてしまうから。
私と言う名の十字架に。
逃げられない、逃がさない。
私の心はあなたに奪われた。
神や友達よりもあなたが大切になってしまった。
それが私のエゴでもあなたは誰にも渡さない。
「播磨先輩、私じゃ駄目ですか?」
ずるいかも知れない。
けど、もう止まれない。
一度、動き出した時は絶対にね。
- 130 名前: